6:「回虫博士、藤田紘一郎先生」 (2002.11)


 先日、国際協力事業団(JICA)の『国際協力』の取材で、東京医科歯科大学の教授、藤田紘一郎先生を撮影させていただきました。藤田先生は回虫研究の第一人者で、『笑うカイチュウ』『コレラが街にやってくる』『“きれい社会”の落とし穴 人と寄生虫の共生』などの著書でも有名です。



 藤田先生は、今の日本の医学界が遺伝子治療などの先端医学の研究に極端に重きをおき、それ以外の研究がだんだんとなされなくなっていくことをたいへん危惧していました。たとえば先生が所属する寄生虫学教室などもその一つです。

 日本ではアトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー発症が普通になってしまいましたが、寄生虫の存在がそうしたアレルギーの抑制に関係しているということなどもわかってきているのだそうです。また地球温暖化や人の流動化が進み、世界最大の感染症であるマラリアが、日本でも流行することが予想されているにもかかわらず、診断ができなかったり薬もなかったり。



 藤田先生の研究室にうかがって取材させてもらいましたが、その研究室は近代的な雰囲気ではなく、「昔ながらの」というような形容詞が似合いそうなところでした。僕には居心地のいいところでした。

 撮影しながら藤田先生の人柄に触れていると、先生は「医師として自分は本当はどうしたらいいのだろう、どんな役に立ち方があるのだろう」ということを欲得を離れて生きているように思える方でした。真摯な態度でそう生きているようにみえました。 35年に渡るインドネシアでのフィールドワークを続けてこられた藤田先生の瞳に、インドネシアの子供たちのきらきらした瞳が重なって感じられました。

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